"生涯シンガー" の検索結果 551 件

  1. 第二章11-⑤鍵と煙草~謠子16歳-小説【謠子】

    第二章11-⑤鍵と煙草~謠子16歳-小説【謠子】

    家に帰ると既に家じゅうの電気は消えていて、しいんと静まり返っていた。謠子は北向きの自室までの階段をそっと上がり、窓を少しだけ開けてまた煙草を吸った。隣の家の窓に人影が映るたび、カーテンの陰に隠れて体を小さくした。机の一番下の引き出しに大きな缶で出来た灰皿を隠し、深夜に吸った煙草の吸い殻をどんどんそこに投げ入れていたら、あっという間に缶はいっぱいになった。けれど、沢山の吸い殻を家のゴミに出す訳...

  2. 【その後の『新宿スイング』森山高校吹奏楽部】 【第三章/真吾と良太】 第八回

    【その後の『新宿スイング』森山高校吹奏楽部】 【第三章/真吾と良太】 第八回

    第八回鬼の目にも涙 一恵と太は仕事を始めた。食事が終わったのを確認した太は臨太郎を呼び、「上に行け。話があるだろ」と言い、「いいな?母さん」と一恵に確かめた。「いいよ。飲み物は上にあるだろ。何かあったら内線。いいね?」臨太郎はうなずいた。真吾と良太に「僕の部屋に行こう」と言って白衣を脱いだ。「それじゃ」と大道具三人男に挨拶した。真吾と良太は太と一恵に「ごちそうさまでした」と言って店を出た。建...

  3. 第二章11-④鍵と煙草~謠子16歳-小説【謠子】

    第二章11-④鍵と煙草~謠子16歳-小説【謠子】

    高校に入ってすぐに仲良くなったルカの家は、通っている私立高校のすぐ近くにあった。ルカには小学生の妹と弟が居て、お父さんは居なかった。学校が終わると、約束などしなくても自然と仲間たちがルカの家に集まって本人がまだ帰っていなくても、玄関先で「こんにちは!お邪魔します!」と声を掛けそのまま自由に2階の部屋に上がって、ルカの帰りを待ちながら屯たむろした。おばさんはいつもルカに気を遣っているような笑顔...

  4. 第二章11-③鍵と煙草~謠子16歳-小説【謠子】

    第二章11-③鍵と煙草~謠子16歳-小説【謠子】

    謠子の周りには、不思議と同じような境遇の友人が多かった。離婚してシングルマザーになっている家の子や離婚はしていないけれど、ほぼ別居状態で父親が帰ってこない家や一見何事も無く幸せそうな家族構成でも、何かしら屈折したところがあってそんな環境に反発している友人も多かった。先にそういう会話があって仲良くなるのではなく知り合ってしばらく経ってから、よくよく話してみると似ているのだ。無意識のうちに、お互...

  5. 第二章11-②鍵と煙草~謠子16歳-小説【謠子】

    第二章11-②鍵と煙草~謠子16歳-小説【謠子】

    父親は、謠子がこの壁の花を消そうとしたことの意味を考えることもなかった。父親が謠子の為に(勝手に)選んだ壁紙の花を夜な夜な消している娘の奇行にすっかり頭に血がのぼった父親の目には継母に対する当てつけの、ただの反抗期にしか映ってはいないのだ。でも、例え父親にその本当の理由を問いただされていたとしても謠子は今の気持ちを伝えることは出来なかっただろう。自分の気持ちが本当はどうなっているのか、謠子自...

  6. 第二章11-①鍵と煙草~謠子16歳-小説【謠子】

    第二章11-①鍵と煙草~謠子16歳-小説【謠子】

    学校の授業が終わっても(真っ直ぐ家に帰りたくない)と思う日が多くなった。家に帰っても、どうせ北向きの部屋の窓から見えるのは隣の家の白い壁だけでオレンジ色に沈む夕日も遠くの山も見えない。それに手紙の一件があってから、自分の部屋に居てもどこか落ち着けない日々が続きズカズカと土足で踏み荒らされたままの心がいつまでもこの部屋の居心地を悪くしていた。壁の陰気な朱色の花柄が目について、気分まで鬱々と落ち...

  7. 学遊倶樂部秋からの講座

    学遊倶樂部秋からの講座

    学遊倶樂部秋からの講座やさしい編み物塚西百合子℡090-2033-6300(塚西)定員10人会場野村公民館月曜日午前9時30分~11時30分 運営費1,000円材料費2,000円合計3,000円(初回納付)編み物の基本から学びながら、いろいろ編んでみましょう。10月3日(月) 10月17日(月) 11月7日(月) 11月21日(月)12月5日(月) 籐の篭づくり熊木保子℡090-7749-4...

  8. 第二章10-⑥秘密の日課と出せなかった手紙~謠子15歳-小説【謠子】

    第二章10-⑥秘密の日課と出せなかった手紙~謠子15歳-小説【謠子】

    継母が謠子の部屋に勝手に入り、引き出しまで開けて手紙を見つけたという事実にもそれをまるで当然のことのように、気にも留めていないふたりにも、父親が普段は"ママ"と甘ったるい呼び方をしているのにこういう時にだけその呼び名が"お母さん"になっていることにもぞっとした。「どういうつもりだ?こんな手紙書いて!」「こんなもの読んだらお兄ちゃんがなんて思うか!心配するだろう!」(そっちこそ、ひとの引き出し...

  9. 第二章10-⑤秘密の日課と出せなかった手紙~謠子15歳-小説【謠子】

    第二章10-⑤秘密の日課と出せなかった手紙~謠子15歳-小説【謠子】

    ショックと怒りをどうにも鎮められず、かといって何処にもぶつけることも出来ずに今は1000km以上も遠く離れて暮らす、謠子の心情を唯一話すことの出来る兄に向けて手紙を書いた。「"ママ"が明らかな悪意を持って妹のユカに接している。自分の本当の娘であるカコちゃんと差別をして叱っている」感情に任せて書き終えた手紙を実際には送ることが出来ないまま謠子は自分の部屋の机の引き出しに仕舞っておいた。思いの丈...

  10. 第二章10-④秘密の日課と出せなかった手紙~謠子15歳-小説【謠子】

    第二章10-④秘密の日課と出せなかった手紙~謠子15歳-小説【謠子】

    継母がこの家に来た当時、まだ3歳だったカコちゃんといちばん歳が近い妹のユカは最初からすぐに打ち解けて遊んでもいたけれど、まだ小さなふたりは当然のように度々喧嘩にもなった。喧嘩の原因などはいつも些細なことで、謠子が偶然見掛けたその日も恐らくたわいもないことで丁度継母に叱られているところだった。継母が下の妹のカコちゃんにコツンとする"振り"をした直後上の妹のユカに落としたゲンコツがどう見ても明ら...

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