エキサイトブログ

おれ自身には、ここへ来たことが流罪にひとしい感じがする――小栗虫太郎「ナポレオン的面貌」⑧

小栗虫太郎「ナポレオン的面貌」より⑧陽がさした。力のないどんよりとした光りが、層雲から洩れて、ぱっと野山の雪が輝やいた。樅（もみ）や白樺がはえた疎林のなかを縫い、道はどろどろした汚い帯のように続いている。その雪泥のしたには材木が敷かれていて、ここが重砲の通り道になっていた。「おれが、この村にきてからもう十年にもなるが……」と、ながい輜重（しちょう）車の列が過ぎてやっと静かになると、ふとこんな...