無花果 この町では光がどこまでも染み込んでいるように見えた。大地までも光を含んで赤く見えた。物陰には闇の換わりに藤色の気体が立ち込めているように見えた。そんな空気が僕を投げやりな気分にさせていった。窓の外の町の景色は幻影に過ぎなかったので時々透き通った。部屋の中をいくら整理しても、どうでも良い家財道具はちぐはぐな感じがした。ステレオのアンプだとか片方しかないスピーカーだとかいったガラクタが捨...